TRI/EDGE
ストーリー
魔法が支配する《常冬の国》への侵攻――
《ベアフェレス王国》の歴史は、その第一歩で幕を開けた。


それまで国土を支配していたのは、土着の神を信仰する魔法使い達であった。
彼らは巨大な神殿を築き、そこに住まう数名の巫女が受け取った神託に従い、
一握りの実力者たちが合議制で国を運営していたという。


王国と魔法使いの争いは千の朝と夜をかけて繰り広げられ、
最終的に国王自らによる神殿の制圧をもって決着の瞬間を迎えた。
この《常冬の国》征服完了の折、土着の信仰を断ち切るべく神殿は取り壊され、
同じ場所に建設されたのが現在のベアフェレス王城である。


国を失った魔法使い達は、王国への恭順を誓うことで国内での居住が許された。
やがて彼らは、王都より東の地域に寄り集まり、自ら《貴族》を名乗り、
しばしば王政に口を挟むようになる。
これは彼らが依然地方に強い影響力を持ち、
また旧国時代の財産を変わらず保有し続けていることが原因であった。
しかし、王国は貴族をあくまで旧国の実力者としてのみ扱い、
実際の政治の中で彼らを重用することはなかった。
王国の対応は貴族の不満を生み、
三百年の年月をかけて徐々に蓄積されてゆくこととなる。


そして現在。
失われた魔法使いの国の奪還を掲げ、一人の公爵を中心に貴族が一斉蜂起。
ベアフェレス王国領へ侵攻を開始した。
公爵は在りし日の《常冬の国》に君臨していた巫女の末裔――
巻き起こった争いは、奇しくも三百年前と同じ構図を描くこととなった。


* * *


王都と貴族領を結び、正三角形を描く場所に位置する島に存在する《学園都市》。
ここには、王国全土より集まった様々な人種、身分の学生が暮らしている。


都市内部には三つの学園が存在し、それぞれが異なる傾向の学生を受け入れていた。
王都の富裕層や商家出身の学生を集めた《エルノーダム学園》。
一般から貧困層の学生、また貴族出ではない魔法使いを集めた《スレドニール学園》。
貴族出身の魔法使いを集めた《アヤト学園》。


王国と貴族間の戦争の勃発により、国王は
「国の未来を担う学生達は戦火から守られなければならない」
と、学園都市全体の閉鎖を決定した。
これにより、王国からの物資輸送以外、学園都市と王国本土間の一切の移動が禁止される。
期限は本土での戦争が収束を迎えるまでとされ、
学生達は不安が漂う中、いずれ閉鎖が解かれるその日まで、
学園都市内での生活を送ることを余儀なくされた。


それでも学園都市は自治機能までもが麻痺した訳ではなく、
王国からの物資援助もある以上、従来とほぼ変わらぬ生活を送ることが出来るはずであった。


「三学園の全生徒の皆さんに通達致します」


崩壊のきっかけは一枚の通達文であった。
エルノーダム学園生徒会長【四季織羽】から、
スレドニール、アヤト両学園の生徒会に宛てられた一通の書簡。
そこに記されていたのは、
約束されたはずの学園都市の平和を根底から否定する宣告であった。


「我がエルノーダム学園は、スレドニール、アヤト両学園に対し宣戦布告を致します」


「王国本土が戦争状態に突入した今、王国の未来を担う我々が守られ、
安寧のまま過ごすことなど許されません。
我がエルノーダム学園はスレドニール、アヤト両学園を制圧し、
この学園都市にフェレシアンも魔法使いもない、誰もが笑って暮らせる楽園を築きます」


「それをよしとしないのであれば、どうぞ全力で歯向かってみせなさい」



この通達を受け、同日中にアヤト学園もまたエルノーダム学園とスレドニール学園に対し、
本土と同様に「魔法使いによる領土回復」を掲げ宣戦布告。
残るスレドニール学園もまた、他の二学園からの宣戦布告を受け入れる形で参戦を決定。
平穏であったはずの学園都市は、かくして一日のうちに三つ巴の戦争に突入した――。


「さあ、お祭りを始めましょう。
学園都市が始まって以来の、盛大な――残酷なお祭りを」

>戻る<
inserted by FC2 system